林白言文学賞会議( 平野温美議長代行)による「第26回林白言文学賞」は、加藤利器著『赤いテラスのカフェから』に決定しました。
「第26回林白言文学賞」は、令和4年10月5日に応募を締め切り。寄せられた詩集・伝記・歌集・句集・小説を選考委員に配布して査読を依頼。令和4年11月15日の選考委員会にて、林白言氏が「落ち葉運動」と名づけた文化運動を継承発展させる作品であるとして、全一致で『赤いテラスのカフェにて』が正賞として選ばれました。
令和5年2月18日(土)北見市内のホテルにて、午後5時から授賞式、同6時から祝賀会が開かれました。
第26回「林白言文学賞」の受賞作および受賞者紹介は以下の通りです。
・受賞作「赤いテラスのカフェから」
本書の内容は、サブタイトル、「フランスとアイヌの人々をつなぐ思索の旅」が伝えてくれる。題名の「赤いテラスのカフェから」とは、この思索の旅が始まった場所である。当時、作者は北海道新聞特派員としてパリ支局に勤務しており、その建物はシャンゼリゼ通りにあった。そのビルの一階にあったのが件のカフェである。そこでのフランス文学者菅野昭正との会話から端を発し、作者はル・クレジオを通し文化人類学、少数民族、特にアイヌへの関心を深めてゆくことになる。
本の注目は、最大のミステリーである蠣崎波響の名画「夷酋列像」の突然の発見とその行方にある。12点のうち11点が1984年にフランスのブザンソン美術考古博物館で見つかった。作品が描かれたのは1791年。いったい、いつ誰によってどのように日本から運ばれたのか。歴代の特派員はもとより作者は長年あらゆる伝手をたどるが、未だ判明していないという。本書には数枚の美しいカラー写真が掲載されてある。
作者の思索の旅はアイヌを含む少数民族の意義、フランス革命と人権宣言、日本の平和憲法、人権とアイヌ問題、メディア批判へと発展する。本書は難解を排した文章である。作者自身は自分の主張を抑え、数多くの知性あふれる他者をして語らせるが、各人物については詳細に研究されてある。写真も多数掲載され、読み応え見ごたえのある一冊となっている。
・受賞者 加藤利器氏
1956年千葉県出身。東北大学卒業後、1979年、北海道新聞社入社。本社社会部、東京支社政経部、同外報部を経て、1994年~1998年までパリ駐在。経済部長、論説副主幹、東京編集局長、北見支社長などを歴任し2019年から道新文化事業社代表取締役社長。2021年6月、同社を退社し、2022年1月、札幌日仏協会理事長に就任しています。